組織の限界

ケネス・アロー(Kenneth. J. Arrow)は経済学を学んだものなら誰でも知っている有名な学者だ。 アローの不可能性定理は教科書には必ずといっても載っているものであるし、厚生経済学、社会的選択理論への重要な貢献など経済学の発展に大きく寄与した。さらに…

隷従への道

F.A.ハイエクの思想史上の位置付けはなかなか誤解されやすい。 社会主義、全体主義への明確な批判は有名な話であるが、レッセフェール(自由放任主義)に対しても批判的であったことはあまり知られていない。彼は無政府主義者ではなく、政府の有用性を認めてい…

アメリカ経済政策入門

原題は、"CONCRETE ECONOMICS The Hamilton Approach to Economic Growth and Policy"である。 Hamiltonとは、アメリカ建国の父の一人、アレクサンダー・ハミルトンのこと。アメリカ経済政策はハミルトンの政策、考え方が受け継がれている。 イメージとして…

愛と怒りの行動経済学

原題は、FELLING SMART -why our emotions are more relational than we think- というよう。こちらの方が内容に対して直裁的だ。 感情と理性の二項対立で語られることが多いが、だいたい軍配は理性の方にあがる。感情は人間の行動を過てるものとされがちで…

情報と秩序

エントロピー。よくわからない言葉である。 宇宙はエントロピーの増大が進んでおり、宇宙は無秩序に向かっているという。これは物理学、熱力学など自然科学において明確にされてきたことらしい。 しかし、地球には逆のことが起きているという。我々は情報の…

データ分析の力

数式は一切出てこない。 因果関係を証明するためのエビデンスとなる手法と実務的な利用法がわかる。 因果関係の証明はA→Bであり、それ以外ではないことを見極めないといけない、とても困難な道。当たり前のようだけど、本当にそうかはどうやって証明できる…

役に立たない読書

読書は娯楽である。 役に立つか、たたないか、考えるのは無粋である。役に立てようと思って義務的に読むのは面白くない。つまらない本は読まなければいい。 でも食わず嫌いはよくない。何事も試し読みしてみると、意外と面白いものに出会える。無駄骨あるけ…

リバタリアニズムを問い直す

リバタリアンというと自由至上主義者という言われ方をする。よく比較対象としてあげられるのはコミュニタリアンであったり、社会主義者であったりする。しかし、私はそれはちょっと違うのではないかと思う。 リバタリアンは「自由」に価値があるものとして重…

ベストセラーコード

ベストセラーには売れる法則がある。それも効果的な広告宣伝ではなく、その本の中身にだ。 計量文献学という学問分野はあまり聞き慣れないが、データ分析の技法を文学の分野に取り入れたもののようである。一般的な計量経済学は数値データを基本的に解析する…

組織の掟

筆者には外務省という特殊な事情があるとしても、どこであっても組織の掟があることは言うまでもない。 組織は人を引き上げてくれるが、他方で、組織防衛のためなら個人を切り捨てることも厭わない。 組織の非情さと組織を組み上げるそれぞれの個人の温かさ…

不平等と豊かさ

ハリー・G・フランクファートは、高名な哲学者であるが、変な本を書いている。少なくとも、日本人の一般人諸兄はそう思うに十分な理由がある。(その理由は一番最後に。) が、ここでは平等主義の是非を扱う ”On Inequality”について話したい。これもまたそ…

合理性と人間の性(さが)

経済学においては、大きく分けて2つのアプローチがある。 一つは、様々な与件をもとに演繹的に理論を構築していく立場。こちらは伝統的な経済学の流れに近い。伝統的には人間は合理的な存在であることを仮定していたが、近年は情報の非対称性など人間の有限…

デフォルトの効能

人間社会の発展の歴史は、自由の追求と切り離せない。独裁国家や君主制からの離脱、フランス革命などで多数の先達が血を流して勝ち取った民主主義は、選択する自由を得るための人々の戦いでもあった。 21世紀になって、情報化が進んでくると、人々のくらしは…

夜と霧

ちょっといやなことがあったとき、すべてを吹き飛ばしたい、ちっぽけな悩みに過ぎないと気づきたいときに、ホロコーストの体験記を読んでみるといい。フランクルは、アドラーやフライトに学んだ心理学者で、詳細な現実・心理描写は読者を引き込み没入させる…

原因と結果をはき違える。(それでも社会は動いていく)

因果関係を見出すのは思ったよりも難しい。 “見せかけの相関” であればいくらでもある。「風吹けば~桶屋が儲かる」は遠大な因果関係があるが、ジブリ映画の新作とアメリカの株価変動に因果関係はなさそう。 ただし、ウソも何度も言うと真実になるというよう…